いよいよ、仏歯への参拝となった。流石に気持ちが引き締まる。一般観光客として訪れていれば、仏歯を参拝するどころか、この伽藍の中に入ることも許されない。それほど重要な儀式に、私は一員として参加しているのだ。
狭い階段を、二階へとのぼると、奥の部屋に、ガラスケースに収まった舎利塔が見えた。
壁には一面に壁画が描かれている。古代エジプトのそれのように、多くの神仏や人、動物、鬼、悪魔が、整合性をもって描かれている。おそらく、それぞれにまつわる伝説があるのだろう。
まわりをみわたしながら、赤い毛氈の上を、仏歯に向かって歩いた。仏歯のある部屋への敷居は、絶対に踏んではいけないことになっている。
ガラスケースの中には、金銀財宝と共に、3つの金色の舎利塔が安置されていた。私は厳かな気持ちになり、自然に合掌していた。
白い花を盛られた銀の皿を受け取り、それを、舎利塔の前にばらまくように供える。この国では、日本とは異なり、葉や茎を取り去った花の部分だけを供える。
ここでも、短時間の勤行を許可され、三誓偈を厳修した。
仏歯への参拝を終え、総長の部屋に招かれた。仏歯寺総長の言葉と、それに対する私の返礼を、ウパティッサ師が翻訳してくださった。彼の協力なくしては、今回の旅はここまでうまくいかなかっただろう。
総長と、仏教の興隆のために、これからお互いに協力していくことを約束し、金色の舎利塔を手渡された。
仏舎利を前にして、私は、不思議な気持ちになった。緊張、感動、畏れ、なんとも言い表せない。
そして、心は澄み切っていた。
ホテルに帰るとすぐに、仏舎利を部屋の中央に安置し、 改めて嘆佛偈を勤めた。マハボディソサエティー(大菩薩会)の僧侶たちも、お勤めをした。
−続く−